――初めから、無理があったのだ。
それを、吹雪は熟知している。
充分に。
自分達の存在そのものが、歪で、自然でないものはそれだけ脆く、バランスが取り辛い。
不安定な中、それでもお互いが必死にしがみ付こうとすればするだけ、不安定さはいや増していく。
ひとつの体に2つの精神。ひとつの脳に2つの異なった処理。
ひとつの体にかかる2人分の負荷。
いつか、このまま続けていけば、いつか壊れていくのは目に見えていた。
綻びは、すでに見え始めていたのだ。
自分達の存在する価値。
チームから求められる貢献の違い。
2人にとって2人は完全に別物であるのに、『外』の人々からすれば一人は一人に過ぎない。
危うかった均衡に入った亀裂は徐々に大きなものへと育っていく。
それを悲しく、もどかしく思いながら、でもきっと、これを望んでいたともいえるのだ。
おそらく。
…おあつらえ向きだ。
何もかもが。
胸の内、抱えた心の中の、たった一人の弟に話しかける。
(大好きだよ)
伝わればいい。
決して、聞こえないだろうけれど。
(大好きだ)
吹雪の副人格。
我が強いくせに、移ろい易い、胡乱な存在。
死んでしまった、かつての。
(だいすき)
これだけが、吹雪のたった一つの真実だから。
2011.02.10 雪幻の存在証明