拝啓。

親愛なるルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様

お元気ですか?
俺は元気です。
怪我も病気も何一つしない相変わらずの健康体なので、君はまた「この体力バカが!」と怒るかもしれません。(未だに何で君が怒っていたのかよく判らないのですが、やはりあれは体力が無い事への僻みだったのだろうか。返信求ム)

あれから、本当にいろいろな事がありました。
君は突然いなくなってしまったから、今日の日本の姿は知らないのでしょう。それともそちらでも絶えず情報は手にしていますか?

俺は相変わらずランスロットに乗っています。今はもう兵器としてではないけれど、やっぱりなんか複雑です。
特派(今はもう違う名前だけど)の人達もみんな元気です。
ロイドさんはいつでもランスロットが一番で、人の古傷を笑いながら抉ってます。そしてやっぱりその度にセシルさんに怒られています。
そしてなんと!2人は結婚しました。俺からしてみればようやくかという感じですが、特派に余り関わりが無くてそれでも一応2人を知っている人達はとてもビックリしていました。
一応建前上は、毎日のように実家から見合いをしろと追いかけられる事にいい加減嫌気が差して、逃げる為に都合の良い相手を選んだだけ、という事ですが、実際の所それなりに相思相愛だと俺は思っています。
普通逆だよね?コレ。

結婚といえば、君のお兄さん、シュナイゼル陛下の婚儀も物凄く盛大に行なわれましたね。
流石の君も、あれだけ大きいと嫌でも見る羽目になったんじゃないのかな。
俺はロイドさんが陛下のとても懇意にされてる直属の部下という事で物凄く近くで参列を許されました。ランスロットもデカデカとテレビに映っていたから、ロイドさんはわざわざ全チャンネル録画をして、暇な時は再生して悦に入ってます。
奥さん――皇后様はとても綺麗な方でした。
真っ直ぐな黒い髪の女性にしては長身の方で、何処か中性的な――君に、すこし似てた。雰囲気とか。流石に、瞳の色は紫ではなかったけど。始めて見たときはびっくりしました。
…もしかしたらライバルだったのかも。なんてね。

陛下はとてもお元気です。君のお姉さんも、リハビリを頑張っていました。この間会いに行ったらユフィもいて、2人で話していたら物凄いスピードでやってきました。
手動なのに、走るより速かった絶対。
戦場にいた頃と同じくらい険しい目で睨まれて、久し振りに心臓が縮みあがりました。物凄い君とそっくりでした。君達本当に姉弟だよ。ギルフォードさんの苦労が目に浮かびます。
ユフィは昔と変わらず慈善活動に精を出しながらお姉さんの手助けをしています。皇女であった頃より生き生きして楽しそうでした。
でもやっぱり2人は野に下っても何処か普通の人と違った雰囲気は健在で、生まれながらの「皇族」なんだなと実感しました。

君も、そうだったね。学園にいた頃も、君の放つ存在感は強烈だったよ?
何だか最近は何でも最終的に君に結び付けてしまっている気がします。
いい加減寂しくなっているのかも。

そうそう、コーネリア様(敬称は必要無いと言われましたが、これは変えられそうに無いよ)から伝言を言付かっています。「再び歩けるようになったら真っ先に殴りに行くから覚悟しておけ」だそうです。…ごめん。俺には止められそうに無い。せめて顔だけは勘弁して下さいと懇願しておくよ。

あと、俺のことも少し。
いい加減貯まりに貯まった金の使い道が無かったので、家を建ててみました。
昔住んでた枢木の家はさすがに取り壊されていたけど、土地は残っていたので同じ場所に。今では珍しい木造建築の日本家屋です。ちょっと彼に対抗して白は使っていません。
でも落ち着いた感じの良い家に仕上がりました。
…君、今ジジ臭いとか思ったね?
しっかり土蔵も作ったから安心して泊まりに来て下さい。きっと気に入るよ。絶対。

君と関わりのあった人達の近況としては、このくらいかな。
リヴァル達には最近会えていません。でも今度会いに行ってみようかと思っていますので、次回の手紙をお楽しみに。





君に、こうして手紙を書くのは何回目だろう。
決して届かない手紙を書き続ける俺を、君はそちらで笑っているかもしれないね。
時々、自分でも女々しい気がします。

そちらの天気はいかがですか。
ナナリーは元気?
君は、どうですか。

俺は君がいなくて寂しいです。
ルルーシュに会いたい。

時々、叫び出しそうになります。そういう時は、こんな風に手紙を書く事にしています。「俺への手紙は単なる代償行動か!」と君は怒り出しそうだね。でも君が俺の隣にいないのが悪いんだから、そのお叱りは受け付けません。


ルルーシュ。
君はそちらで幸せですか。
ナナリーやC.C.さんや彼もいるんだから、愚問な気もするけど、君はそちらで笑っていますか。
笑っていてくれますか。
俺は君に会いたくて堪らないけれど、君が笑っているなら、せめて7年は我慢しようと思っています。
あと3年だね。
首を洗って待っていて下さい。
俺は本気です。

前回の手紙は、裏庭で燃やしておきます。
灰を空に飛ばせば君のところにまで届くかもしれないし。


それでは。
また逢える日を楽しみにしています。



枢木スザク。








2007.02.02 砂塵の果て end